台湾南部・台南市に今月13日、「湯徳章故居紀念館」が正式にオープンした。「228事件(1947年2月28日に発生して台湾全土に広がった、当時の政府軍による民衆に対する流血弾圧事件)」の犠牲となった地元の英雄、湯徳章(日本名は坂井德章)の旧居を記念館として改築したもの。文化部(日本の文科省に類似)の李永得部長(=大臣)は29日、社団法人台南市湯徳章紀念協会の黄建龍理事長、国家人権博物館の陳俊宏館長らと共に、同館を訪れて参観した。
湯徳章は1907年、日本人警察官の新居徳蔵(旧姓は坂井)と台湾人女性の湯玉との間に生まれた。台南市で生まれ育ち、日本で法律を学び、高等文官試験司法科に合格。台南市に戻って弁護士事務所を開いた。湯徳章は生前、弁護士として人権擁護に取り組んでいたが、1947年の228事件発生後に逮捕され、台南市の民生緑園で公開銃殺された。
昨年、湯徳章の旧居を記念館として再活用することを目指すクラウドファンディングが行われた。寄せられた資金を使って旧居の改築が行われ、今年ようやく「故居紀念館(=旧居を活用した記念館)」として生まれ変わった。
社団法人台南市湯徳章紀念協会の黄建龍理事長は、「湯徳章が取り組んだ人権擁護の精神を伝えるため、湯徳章のかつての暮らしぶりを再現するほか、この空間を歴史の記憶、民主主義や人権に関する教育、歴史の真相と救済、法の支配に関する教育などを推進する場所として活用すべく、より改善を加えていきたい。湯徳章の旧居がさまざまな世代の歴史の記憶を構築するための重要な場所になるよう期待している」と述べた。
文化部の李永得部長は、民間の団体が湯徳章の旧居の保存に取り組み、その精神と行いを代々伝えようとしていることに敬意を示した。その上で李部長は、湯徳章の旧居の保存について、文化部は所有権者の決定を尊重し、予算を計上して助成を行うなどして支援すると約束した。
李部長はまた、文化部に隷属する国家人権博物館(台湾南東部・台東県緑島の「白色テロ緑島紀念園区」と台湾北部・新北市新店区の「白色テロ景美紀念園区」)は2018年の誕生後、それぞれの場所での展示に加え、人権教育の推進や国内外の人権擁護組織との交流・協力にも力を入れ、これまでに台南市の王育徳紀念館、葉石涛文学紀念館など台湾各地の施設と協力し、各地で人権教育の発展に力を入れていると説明した。